1 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:08:03.55 ID:CnKDVukE0
シャル「はぁ……」

シャル「最近一夏とあまり喋れてない気がする」

シャル「あのまま一夏と同じ部屋で過ごせてたら、ってこれは反則だよね」

シャル「もっと積極的な方がいいのかなぁ。でもはしたない子って思われたくもないし」

シャル「うーん……うん?」コンコン

シャル「誰だろう、はーい」ガチャ

一夏「よう。部屋にいたのか、探しちまったよ」

シャル「いいいい一夏ぁ!?」
2 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:09:57.70 ID:CnKDVukE0
シャル(ああもう、僕のばか! 汗のにおいとか大丈夫かな、さっさとシャワー浴びておけばよかったよ……)

一夏「突然悪いな、シャルに話があって来たんだけど」

シャル「ぼ、僕に? えっと、何のお話かな?」

シャル(うー、シャワー浴びてくるから待っててなんて言えないよね)

一夏「明日の休みのことなんだけどさ、俺とどこか外に出かけないか?」

シャル「うんうん、明日のお休みに一夏と僕がお出かけね。……えっ?」

シャル「ええええええええっ!!!?」

一夏「うおっ! どうしたんだ大声出して。だ、駄目だったか?」

シャル「う、ううん! 全然! ぼ、僕でいいの!?」

一夏「ああ。たまには2人でって思ったんだけど、どうかな」

シャル「行くよ、行く! 特に予定もなかったし、ぜひ行かせてください!」

シャル(夢じゃないよね? 夢みたいなお話だけど!)

シャル(一夏と2人かぁ……えへへ)

3 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:12:49.44 ID:CnKDVukE0
――翌朝

ラウラ「Zzz...」スヤスヤ

シャル「よく眠れなかった……」

シャル(2人きりってことは、デートのお誘いってことだよね?)

シャル(意識し出したら目が冴えて眠れなくなっちゃうなんてなぁ……)

シャル(今日着ていく服も決まってないし、そろそろ決めないと一夏を待たせちゃうよ)

ラウラ「よめぇ……」スー スー

4 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:16:04.30 ID:CnKDVukE0
一夏「よう、早いな。俺も早めに来たつもりだったんだけど」

シャル「あはは、僕も今来たところだよ。一夏こそ早いね」

シャル(間に合ってよかったぁ……誘ってくれた相手より遅れるわけにいかないよね)

一夏「そりゃあ誘ったのは俺だしさ。それに俺も男だし、女の子を待たせるわけにはいかないだろ?」

シャル「お、女の子!? そ、そうだよね、一夏は紳士だもんね?」

シャル(一夏に女の子扱いしてもらえた! ふふっ、なんだか嬉しいなぁ♪)

一夏「なあシャル、こうしてるのもなんだしもう行こうぜ」

シャル「そうだね。今日は一夏がエスコートしてくれるんでしょう?」

一夏「任せとけ。とりあえずバスに乗って駅前に行こう」

シャル「うん!」
6 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:20:25.18 ID:CnKDVukE0
シャル(えっと、これってデートだよね? それなら一夏と手を繋いでも……)

シャル(って、この前ははぐれないようにとか言われちゃったんだっけ)

シャル(……大丈夫だよね? 変な子とか思われないかな?)ドキドキ

一夏「ん、おーい。早く来いよー」

シャル「――あれっ? ま、待ってよ一夏ぁー!」

シャル(うぅっ、タイミング逃しちゃった……。次は頑張らないと!)



一夏「ちょうど座れてよかったな」

シャル「うん。2人分空いてて助かったよ」

シャル(一夏と一緒だとどこにいても安心するなぁ……)

シャル(……)カクン、カクン

シャル「……ふぁ、いけない……」ウトウト

一夏「眠いのか? 着いたら起こしてやるから、俺に寄りかかってていいぜ」

シャル「う、うん……ありがとう」ポテッ

シャル(うー、眠っちゃうのがもったいないよぅ……)
7 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:24:39.62 ID:CnKDVukE0
一夏「そろそろ着くぞ。シャル?」

シャル「ん……もうちょっと……」

一夏「ははっ。それは困ったな」

シャル「……っ、あ、あれ? 僕、寝ちゃってた?」

一夏「気持ちよさそうにな。寝顔、可愛かったよ」

シャル(うあああああっ、か、かわ、わわわ)カァーッ

一夏「どうした、顔赤いぞ? まさか体調悪かったりするのか?」

シャル「ななななんでもないよ! 一夏のえっち!」

シャル(って何を言ってるんだ僕はあああっ!) 
 
10 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:28:43.71 ID:CnKDVukE0
シャル「なんだか疲れちゃった……」

一夏「バスの中で寝てたのに、変なヤツだなぁ。今日は始まったばかりだろ?」

シャル(うぅぅ、変なヤツって言われたぁ……)ズーン

一夏「それとも、やっぱり調子悪かったのか?」

シャル「……やっぱりって?」

一夏「最近あまり話せてなかったけど、元気がないように見えたからさ」

シャル(えっ? まさか、それって)

シャル「一夏、僕のこと見ててくれてたんだ……」

一夏「まあな。だから今日はのんびり過ごすつもりで誘ったんだ。まずはどこか喫茶店にでも入ろうぜ」

シャル「う、うん! 行こう、一夏!」

11 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:32:58.45 ID:CnKDVukE0
一夏「俺はコーヒーを頼もうかな。シャルはどうする?」

シャル「んー、僕は紅茶にしようかなぁ」

一夏「決まりな。あ、すみません――」



シャル「――それにしても、一夏がこんな風に僕を誘ってくれるなんて思いもしなかったよ」

一夏「なんだよ、俺が誘ったりしたら迷惑だったか」

シャル「まさか。嬉しいよ、すっごく嬉しい」

シャル(僕のためにわざわざ誘ってくれたんだもんね。嬉しくないわけがないよ、一夏)

シャル(……うん。良い雰囲気だし、せっかく2人きりだし……)

一夏「あ、すみませーん。コーヒーお代わりお願いしまーす」
13 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:36:53.75 ID:CnKDVukE0
シャル「ねぇ、一夏は僕の事どう思ってるの?」

一夏「シャルの事を? どうしてそんなこと聞くんだよ」

シャル「なんとなく、かな。ほら、僕って変わってるじゃない?」

一夏「ははっ、俺がさっき変なヤツって言ったの気にしてたのか?」

シャル「ううん、そうじゃないよ。例えば、自分の事を僕って言ったりとかさ」

一夏「それは前にも言ったろ、無理しなくていいって。男子の口調が染みついてるんだ、仕方ねーよ」

シャル「うん……そうだね。でもそうじゃなくって」

シャル(一夏にこういうことを聞くのは難しいなぁ、やっぱりやめておこうかな?)

一夏「……シャル?」

シャル「ご、ごめんね変なこと聞いちゃって。僕が気にし過ぎてただけかも」

シャル(一夏は優しいから、いくら唐変木だからってこんなの困らせちゃうだけだよね)

14 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:40:47.71 ID:CnKDVukE0
シャル「――あはは、一夏とこんなに話すのも久し振りだね」

一夏「そうだな。いつもは箒やセシリア達も一緒にいること多いもんなぁ」

シャル「一夏はモテモテだからね」

一夏「そうかあ? みんなお構いなしに俺をボコボコに殴ったりしてくるんだぞ?」

シャル「それは一夏が悪いからだよ。もっと乙女心を勉強した方がいいんじゃない?」

一夏「うーん、納得いかねー……でもシャルがそう言うならそうなのかもな」

シャル「そうなんだよ。ふふっ――」

シャル(一夏とずっとこうしていられたらいいのにな……)

シャル(このお店を出たら、一夏はどこへ連れてってくれるんだろう?)

15 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:44:11.31 ID:CnKDVukE0
一夏「なあシャル。ここでお昼を食べたあと公園にでも行こうと思うんだけど、どうだ?」

シャル「うん、いいよ。僕のことしっかりエスコートしてね」

一夏「お手柔らかにな。はは、そうだな――」

シャル「僕の手も柔らかいし、なんてのはジョークとしては面白くないよ?」

一夏「ぐっ、な、なあ。なんでみんなたまに俺の考えてることが分かるんだ?」

シャル「さあ? どうしてだろうね。手を褒めてくれるのは嬉しいけどさ」

シャル(一夏はわかりやすいっていうか、知ろうとするとわかっちゃうんだよ)

シャル(もっと一夏のことが知りたいな、なんてね)
17 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:47:43.95 ID:CnKDVukE0
シャル「ここって……城址公園?」

一夏「そうだな。前に来たことあるのか?」

シャル「あ、うん。ラウラと買い物に行った時にね、ちょっとだけ」

シャル(わっ、わっ! まさか一夏とここに来れるなんて!)

シャル「く、クレープ屋さんがあるんだ。一夏は甘いもの嫌いじゃないよね?」

一夏「おう。じゃあ食べに行こうぜ。何かおススメとかあるのか?」

シャル(ど、どどどどうしよう! ラウラやみんなには悪いけど、ここに連れてきてくれたの一夏だもんね!?)

シャル(一夏はミックスベリーのおまじないを知らないみたいだけど……)

18 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:50:44.81 ID:CnKDVukE0
シャル「ぼ、僕はイチゴが食べたいなぁ」

一夏「へー、結構普通だな。普通のメニューにこそ当たりが多いって感じか」

シャル(……さすがにここで、一夏にブルーベリーを食べてってお願いするのは反則だよね)

一夏「どうしたシャル? 考え事なら相談に乗るぞ」

シャル「ふえっ!? や、これは違くて……ね? あ、あはははは」

シャル(一夏の顔が見れなくなっちゃった……)カァー

一夏「? お、クレープ屋ってあれか。ちょうど人もいなそうだ」

シャル(わあああ待って待って、まだ心の準備がっ!)

一夏「シャルはイチゴだっけ。おっ、こんなに味多いのか。どれにするかなぁ」

シャル(あの時の店員さんだ……あうっ、目が合っちゃった……)

店員「――もしお悩みでしたら、ブルーベリーなどはいかがでしょうか。彼氏さん?」

シャル「っ!?!?!?!?」

19 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:54:12.76 ID:CnKDVukE0
一夏「おっ、美味いなこれ! なあシャル、って……おーい」

シャル「……」ボーッ

一夏「おいってば。早く食べないともったいないぞ」

シャル「う、うん……」パクッ

シャル(これはもう、いいよね? 一夏が食べ終わっちゃう前に――)

シャル「ね、ねえ一夏? いいいい一夏のクレープって、おおお美味しい?」

一夏「ああ、店員さんが勧めてくれただけはあると思う。なんなら食ってみるか?」

シャル「」ボフッ

一夏「その代わりと言っちゃあなんだけど、俺もシャルのク」

シャル「いいいいいいよ! 食べて食べて、どんどん食べて!?」

一夏「お、おう……? じゃあ、いただきます」パクッ

シャル(心臓が破裂しそう……)ドキドキ

シャル「ぼ、僕も一夏の、いただきます……」パクッ
21 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/02(水) 23:58:16.09 ID:CnKDVukE0
一夏「――それでな、さっきの五反田弾ってやつの話なんだけど」

シャル(……だめだ、さっきのが恥ずかしくて一夏が何を喋ってるのか頭に入ってこない)

シャル(僕って今どんな顔してるんだろう。変な風に見られてなければいいけど)

一夏「あいつの妹好きが筋金入りでさ――」

シャル(これじゃあせっかく誘ってくれた一夏に悪いよ)

シャル(こういう時って人の文字を3回書いて飲むんだっけ……あれっ?)

シャル「あそこにいるの……」

一夏「ん? どうかしたのか」

シャル「え、あ……なんでもないよ」

シャル(小さい女の子が……泣いてる? もしかして迷子かな)
23 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:02:04.59 ID:8FAxkUk40
シャル「僕ちょっと行ってくる!」

一夏「シャル? どこ行くんだ、おーい!」

シャル「ご、ごめんね! でも、急がないと!」



シャル(ははっ、一夏驚いてたなぁ。つくづく損してるのかな僕って)

シャル(たとえそうだとしても、この子を見て見ない振りするなんて……僕にはできない)

女の子「うぅ……ひっく……」グスッ

シャル「こ、こんにちは。どうしたのかな、お母さんとはぐれっちゃったの?」

女の子「……うん。おか、お母さんがね、迷子になっちゃったの」グスグス

シャル「そうだったんだ。お母さんを探してあげないといけないね」

女の子「うん……」ヒック

シャル「お姉ちゃんも手伝ってあげるから、一緒に探そう? ねっ?」ナデナデ

女の子「……」

シャル「よしよし、ほらっ。手を繋いでればお姉ちゃんどこにもいったりしないから、いこっ?」

女の子「……」ギュッ

24 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:06:17.72 ID:8FAxkUk40
シャル(うーん、この辺には誰かを探してるって感じの人は見当たらないな)

シャル(おまけに……一夏の姿も見当たらなくなっちゃった)

シャル(はぁ……。訳も言わずに飛び出したりしたせいで、怒って帰っちゃったかな……)

シャル(バカだなぁ僕って。……一夏ぁ、いまどこにいるの?)

女の子「……おねえちゃん?」ギュー

シャル(っ、いけないいけない、この子の前で弱気になんかなっちゃだめだ)

シャル「お母さん、いないね。次はあっちの方を探してみよっか」

女の子「うん」

シャル(僕がしっかりしてないとね。この子には、僕しかいないんだから)

シャル(……僕しかいない、か)

シャル(……ううん、この子にはこの子のお母さん、きっとお父さんもどこかにいる)

シャル(それに比べて、僕には誰がいるんだろう)

シャル(僕がつらい思いをしてる時、手を繋いで一緒にいてくれる人……)

「――い、シャルーーーー!」
27 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:10:02.08 ID:8FAxkUk40
女性「本当にありがとうございました。ほら、お姉ちゃんたちにお礼は?」

女の子「えへへー、ありがとうおねえちゃんっ!」

シャル「ふふっ、よかったね。でもお礼なら彼に言ってあげて。僕は何もしてないから」

一夏「そんなことないだろ? この子に最初に手を差し伸べたのはシャルじゃないか」

シャル「でも一夏がこの子のお母さんを連れてきてくれたんだから、やっぱり僕は何もしてないよ」

一夏「お前なぁ、この子のために突然俺を放りっぱなしにしておいてよく言うよ」

シャル「うっ……ご、ごめんなさい。いてもたってもいられなくなっちゃって……」

女性「くすっ、仲がよろしいのですね。素敵なカップルに助けてもらえて本当によかった」

シャル「!? か、カップルなんかじゃないですよ! ねっ、一夏!?」

女の子「あー、おねえちゃん、おかおまっかー!」

一夏「ほんとだ。熱でもあるのかシャル?」

シャル「ないよっ! もう、一夏のバカ!」

28 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:14:38.80 ID:8FAxkUk40
女性「それでは私達はこれで。お姉ちゃんたちにご挨拶しなさい」

女の子「じゃーねーおねえちゃん! おにいちゃんもー!」ブンブン

シャル「ばいばいっ、お母さんの手を離しちゃだめだよ?」

一夏「もう迷子になったりするなよー!」



一夏「――行っちゃったか。よかったな、あの子。嬉しそうにはしゃいじゃってさ」

シャル「お母さんが大好きなんだよ、きっと。あ、そうだ。あの子のお母さんを探してくれてありがとう」

一夏「気にするなよ。俺達は当然のことをしたまでさ。シャルだってそう言ってただろ?」

シャル「さあ、何て言ったっけ。覚えてないよ」

シャル(よかった。一夏とちゃんと話せるようになってる……)

シャル「ねぇ一夏、そろそろ帰ろっか。なんだか僕疲れちゃった」

一夏「今日はご苦労さまだったな。ごめんな、もっとゆっくりさせてやりたかったんだけど」

シャル「ううん、十分だよ。それよりも……あのね?」

29 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:18:14.62 ID:8FAxkUk40
シャル「手を繋いで帰ってもいい、かな?」

一夏「……ああ。いいぜ」

シャル「ありがとう。ふふっ、なんだか僕もあの子みたいだね」

一夏「そうだな。……なあ、シャル」

シャル「うん?」

一夏「学園に着くまでだけど、俺の手を離しちゃだめだぞ?」

シャル「えっ? あ、その……う、うん!」

シャル(さっき僕があの子に言った言葉と似てる……偶然だよね?)ドキドキ

一夏「バス停に行こう。今ならゆっくり歩くぐらいでちょうどよさそうだ」

シャル「そうなんだ。じゃあ、ゆっくり歩かなきゃ」

シャル(一夏と2人きりなのも、もうすぐ終わりかぁ……)
31 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:22:13.93 ID:8FAxkUk40
一夏「帰ってきたな」

シャル「そうだね。なんだか今日一日あっという間に過ぎていった気がするよ」

一夏「そうか? のんびり過ごそうと思って誘ったんだけどな……」

シャル「ううん、のんびりはできたよ。でも今日は本当に楽しかったからさ。ありがとう、一夏」

一夏「そう言ってくれると助かるよ。でも少し疲れたって言ってたよな――そうだ!」

シャル「?」

一夏「夜寝る前にでも俺の部屋に来てくれよ。疲れが取れるようにマッサージしてやるから」

シャル(えええええええっ!? ふ、不意打ちだよ一夏ぁ……)

32 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:26:03.56 ID:8FAxkUk40
シャル「い、一夏だって疲れてるんじゃない? あの子のお母さんを一生懸命探してくれたんだもん」

一夏「あれくらいどうってことないさ。俺のことは気にするなよ」

シャル「ううん、そうはいかないよ。そこまでさせたら一夏に悪いし――」

一夏「シャル!!」

シャル「ふぇっ!? は、はいっ?」

一夏「頼む! 今日はシャルのためにできることをしてあげたいんだ」

一夏「そりゃあ、男に触られるのが嫌だってんなら、無理強いはしないけどさ」

シャル「……そこまで言われたら、断れないね。うん、お願いします」

シャル「あっ、一夏に触られるのは全然嫌じゃないよ? 本当は凄く嬉しかったんだ」

一夏「そっか。よしっ! そのまま眠っちまうくらい気持ちよくさせてやるからな!」

シャル「う、うん……」

シャル(発言がきわどいよぅ、一夏……)ドキドキ

33 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:30:12.71 ID:8FAxkUk40
シャル「ただいまー」

ラウラ「帰ってきたか。どこに行っていたのかは知らんが、思ったより早かったな」

ラウラ「む? 変な顔をしてどうした。幸せそうな、それでいて疲弊しきっているかのように見える」

シャル「えっ、今の僕ってそんなに変な顔してる?」

ラウラ「自覚がないなら尚の事、だな。何かあったのか?」

シャル「なんでも……ないよ? うん、大丈夫だから」

ラウラ「そうか。私の出る幕でないのなら、それはそれで構わないが」

ラウラ「今のお前を絶対に放っておけないお人好しを、私は知っている。そいつに任せるとしよう」

シャル「……」

ラウラ「羽を伸ばしてきたのなら、最後まで伸ばしてこい。休息はできるうちにしておくものだ」

シャル「……そうだね。ありがとう。ラウラ」

ラウラ「うむ。人間素直である事が一番だ」

シャル「ラウラが言うと妙に説得力あるね、それ」

ラウラ「そうか? むぅ……女は少しミステリアスな方がいいとクラリッサは言っていたのだが」ブツブツ

シャル(ラウラも変わったなぁ、一夏のおかげだよね。ラウラにも一夏が必要なんだ……)
35 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:35:19.34 ID:8FAxkUk40
シャル(一夏の部屋の前まで来ちゃった……。だ、大丈夫だよね、一夏が来いって言ってくれたんだもん)

シャル(……一夏いるかな?)コンコン

一夏『シャルかー? 開いてるから入ってくれー』

シャル「お邪魔します……」ガチャ

一夏「おいおい、そんなにかしこまらなくっていいよ。みんな勝手に入ってくるくらいだぜ?」 パタンッ

シャル「そうなの? って、そういえばあの時は危なかったね」

一夏「ああ、あの時はセシリアだったけど、箒もラウラも勝手に人の部屋に入っては暴れたりするんだよな……」

シャル「あはは。一夏は今は一人部屋だから、みんなもますます遠慮してないのかもね」

一夏「俺にもプライバシーってものが欲しいぜ……あ、何か飲み物出すよ。お茶でいいか?」

シャル「うん。今度はこぼさないように注意するよ」

シャル(一夏とここで一緒に過ごしてたなんて……なんだか懐かしいな)

シャル(僕が女の子だってばれてなければ、今もこの部屋で一緒に生活してたんだろうなぁ)

シャル(……でも、今の方が僕は幸せかな。まさか僕の事情を知った上で僕を支えてくれるなんて)

シャル(一夏はみんなにも優しいけど、僕の事はどこまで考えてくれてるんだろう)

シャル(一夏は僕なんかと一緒に過ごしてて、楽しいのかな……)
 
37 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:39:08.63 ID:8FAxkUk40
一夏「お待ちどうさま。熱いから気をつけろよ」

シャル「ありがとう、大丈夫だよ。……ねぇ、一夏」

一夏「なんだ?」

シャル「僕ね、一夏に自分の事、ばれて良かったと思う」

一夏「? 突然どうし――いや、うん。どうしてそう思ったんだ?」

シャル「今こうして、一夏と……みんなと、この学園で過ごすのが凄く楽しいんだ」

シャル「前にも言ったけど、お母さんを亡くしてからの僕は、デュノア社のためになるように生きてきた」

シャル「それしか僕には選択肢がなかったから。命令されるがままに、このIS学園にも編入して」

シャル「デュノア社の広告塔、それに一夏と白式のデータを盗むためだけに」

シャル「何も考えず、この学園でそれだけのために過ごしてる自分がいたかもしれない」

シャル「今ならはっきりと言えるよ。そんなの……絶対に嫌だって」

シャル「誰のおかげかわかるよね。僕が自分自身のこと、大事にしようって思えるようになったのは」

一夏「……」

シャル「一夏のおかげ、なんだよ」
 
38 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:43:28.50 ID:8FAxkUk40
シャル「箒たちとはどんな思い出があって、どんな日々を過ごしてきたかはわからないけど」

シャル「ねぇ一夏、ラウラも変わったと思わない? 初めはあんなに一夏を敵視してたのにさ」

一夏「……そうだな。千冬姉にしか心を開こうとしなかったもんな、あいつ」

シャル「ふふっ、出会い頭にあれだけ強烈に平手打ちされたの、全然気にしてないんだね」

一夏「もちろん最初はムカついたけどな。でもラウラも千冬姉のために必死だったってのがわかったし」

一夏「ラウラのことも守ってやるって、VTシステムから助けた時に言っちまったしさ」

シャル「『守ってやる』……か。一夏らしいね、それまで敵だった相手になかなか言えないよ」

シャル「一夏はみんなに優しいんだよね。その優しさで、僕もたくさん救われた」

シャル「きっと箒たちは、一夏の良いところを僕よりも知ってるのかもしれない」

シャル「だから、かな。僕の素性を知った上で、受け入れてもらえたことが嬉しくて」

シャル「一夏は僕の事を特別に考えてくれるかな、とも思ったけど」

シャル「僕って、さ。一夏の……負担になってるんじゃないかな?」
39 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:47:10.52 ID:8FAxkUk40
シャル「僕のデュノア社との問題は簡単なことじゃない。それは一夏もわかってるよね」

シャル「この学園に在籍してる間に、自分がどう生きていくのか考えなきゃいけない」

シャル「……ちょっと違うね、僕がデュノア社と関わらずにどう生きていけるのかを、探さなきゃならない」

シャル「一夏は一緒に考えようって言ってくれたけど、その言葉だけで僕はもう十分だよ」

シャル「今日だって、僕のことを気にかけて、誘ってくれてありがとう」

シャル「だけど……身に余るって言うのかな、うん。申し訳なくなるっていうかさ」

シャル「今だって、結局一夏の部屋に来ちゃったけど、これ以上、僕が一夏に何かを望むのは」

シャル「おかしいんじゃ、ないかなって……」

シャル「……」

シャル(……ああ、そっか。僕はどこかでこんな風に思ってたんだ)

シャル(自分勝手過ぎて幻滅されちゃったかな。……ううん、その方が、一夏にとってもいいことだよね)

シャル(ごめんね、一夏。でも僕は、一夏の好意を素直に受け取っていい人間なんかじゃ、ないんだ……)
41 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:51:29.42 ID:8FAxkUk40
シャル(一夏、怒ってるかな。そうだよね、一夏だって怒ることもあるよ)

シャル(僕が自分の事を打ち明けた時だって……そういえば、あの時の一夏はどうして怒ってたのかな)

一夏「――なあ、シャル。言いたい事は全部言ったか?」

シャル「……うん。だから、今日はもう、部屋に戻るね? おやすみ、いち」

一夏「だめだ。シャルが言いたい事を言ったんだ」

一夏「今度は俺の番だ。それが筋ってもんだろ?」

シャル「……それは、そうかもしれないけど」

シャル「聞きたくない……って、言ったら?」

一夏「それなら、こうしてでも聞かせてやるさ」ギュッ

シャル「っ――!? ちょ、だめっ、一夏!!」

一夏「何がだめなんだよ、シャル?」ギュー

シャル「い、いま一夏に抱きつかれたりなんかしたら……」

シャル「……」

シャル「ここから、動きたくなくなっちゃう……」

一夏「そっか。じゃあ俺の言いたい事、言わせてもらうぞ。観念して大人しく聞くんだな」
43 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:55:30.63 ID:8FAxkUk40
一夏「俺、お前から本当の事を打ち明けられた時、少し取り乱しただろ?」

一夏「俺も両親に捨てられて、それから千冬姉にはずっと苦労かけっぱなしで、申し訳なく思ってた」

一夏「それでも俺には千冬姉がいてくれたから……悲観したりやさぐれたりせずに済んだんだ」

一夏「たった一人でも家族がいてくれたら、不幸だなんて思わずに生きていけると信じてた」

一夏「だからさ、シャルの話を聞いて、そんなのあんまりだって思った。自分の子供をいいように使いやがって」

一夏「シャルにとって、残された最後の血の繋がった家族なのに……そんな仕打ちをするやつがいるだなんて」

一夏「どうしようもないって諦めたように、上辺だけ取り繕ったシャルの笑顔を見て、俺は悔しくなった」

シャル「……」

一夏「最近になって、シャルが本当に楽しそうに笑うようになって、俺は安心してたんだ」

一夏「だから今のシャルの顔を見てると、何を言われたって見過ごせない」

一夏「今のお前……泣きそうだから」

シャル「……っ。そう、みえる?」

一夏「ああ。いくら俺だって、それくらい見間違わないさ」
45 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 00:59:50.48 ID:8FAxkUk40
一夏「シャルは俺と一緒だと思ってた。でも、全然違ってた」

一夏「つらくて、苦しかったはずなのに、たった1人で諦めることしかできなかった。まだ15歳の女の子だってのに」

一夏「なあ、昼間助けた女の子、覚えてるよな? お母さんと会えて幸せそうだった」

一夏「その時、シャルがどこか遠い目をしてあの母子を見つめてた事に、気付いたんだ」

一夏「だから、俺から手を繋ごうかって言おうとしたらさ、シャルがあの子みたいに甘えてきてくれて」

一夏「母親の代わりにはなれないけど、シャルの支えになれてるみたいで嬉しかった」

シャル「……。一夏、もう、いい?」

一夏「シャルが負担だって? 馬鹿言うなよ、誰がそんな風に言ったんだ。そんなやつ俺は知らない」

シャル「……だめ、一夏……それ以、上は」

一夏「俺はな、シャル。俺は――」

シャル「――やめて、一夏っ!!」
46 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:03:49.62 ID:8FAxkUk40
シャル「……一夏が優しい人なのは、僕だって、よく知ってるよ?」

シャル「誰にだって、寸前まで敵だった人にさえ、優しく接することのできる人だって」

シャル「こんな僕にも、優しくしてくれるのは……すごく、嬉しいけど」

シャル「……これ以上、優しくされたら……僕、耐えられないよ……」

シャル「今日みたいに、ずっと二人きりでいられたらなって、いつも思ってた」

シャル「でも……一夏にとって、みんなの中の一人でしかない、そんな僕が」

シャル「一夏を独占したいなんて、これ以上、願ってしまうようになったら」

シャル「……すごく、つらいよ。つらいんだよ、一夏……」

47 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:06:23.29 ID:8FAxkUk40
シャル「……」

一夏「……」

シャル(今度こそ、おしまいかな……)

一夏「……はぁっ、俺の番だって言ってるのに。しょうがないやつだな」

シャル(明日から……どう一夏と接していけば……)

一夏「まだ俺は……シャルの事が好きだって、言ってないのに」
48 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:09:01.95 ID:8FAxkUk40
シャル(……?)

シャル(いま、一夏、なんて……言った?)

一夏「俺はまだ言いたい事があったけど」

シャル(僕のことが、好……き……?)

一夏「話を聞く気がないなら仕方ないよな。もう遅いし、部屋に戻っていいぞ」

シャル「ま、待って、一夏……今、なんて、言ったの?」

一夏「さあ、何て言ったっけ。覚えてないや」

シャル「……いじわる、しないで。……ねぇ、一夏……」

一夏「……今度はちゃんと最後まで聞けよ? それが条件だ。わかったな」

シャル「うん……だから、お願い……」

一夏「よし。それじゃあ、言うぞ? ――俺はな」





一夏「シャルロット・デュノアって女の子の事が、好きなんだ」
51 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:13:35.86 ID:8FAxkUk40
シャル「……」

一夏「俺はもっとシャルに甘えてほしい。頼ってほしいんだ」

シャル「……僕、も」

一夏「シャルを一人になんかしておけない。好きな子を放っておけるかよ」

シャル「……っ、ぼ……僕、だって」

一夏「デュノア社がなんだ、フランス政府がなんだってんだ。そうだろ?」

シャル「……僕、一夏が」

一夏「俺はシャルが好きだ。お前を苦しめるやつがいるなら、お前を守ってやりたい」

シャル「……僕も、一夏の、こと」

シャル「好――――んっ」

一夏「――――――――――」

シャル「―――――――――」
52 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:17:57.29 ID:8FAxkUk40
一夏「――――っ、ぷはぁ。最後まで聞けって言ったのに。シャルが悪いんだぞ?」

シャル「―――っ、ふぁっ。い、一夏がいじわるするのがいけないんだよ?」



一夏「……ははっ」

シャル「……ふふっ」

一夏「やっと笑ってくれたな、シャル」

シャル「そう、かな……? でもね、もう、限界かも……」

シャル「一夏、ちょっとだけ……もう少しだけ強く、抱きしめてもらっていい?」

一夏「ああ、このぐらいか?」ギュッ

シャル「うん。それと……一夏のこの辺、濡れちゃうかもだけど……ごめんね?」

一夏「おう。今夜は雨だって誰かが言ってたしな。なら濡れたって仕方ないよな」

シャル「……うぅっ……ぐすっ……――――」

シャル(ああ、だめだ。我慢の仕方、思い出せないや)

シャル(こんな時まで一夏は一夏のままなんて、敵わないなぁ)

シャル(……人って、こんなに涙が出るんだね。僕、忘れてたよ。一夏――)
 
54 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:21:36.56 ID:8FAxkUk40
一夏「――落ち着いたか?」

シャル「うん。えへへっ、ねぇ一夏、今の僕の顔ひどいことになってない?」

一夏「そうだなぁ。この前は猫の格好してたけど、今は兎っぽくなってるな」

シャル「目が赤いってこと? あはは、一夏は上手いこと言うね」

一夏「そうか? そりゃよかった」

シャル「兎かぁ……兎ってさ、寂しいと死んじゃうってよく言うじゃない?」

一夏「ああ、でもあれって嘘なんだろ?」

シャル「うん。でも僕は、本当なんじゃないかなって思うことにしたよ」

一夏「ふーん。どうしてなんだ?」

シャル「だって、今の僕は一夏がいないと」





シャル「――寂しくて、死んじゃいそうだもん!」

55 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:23:16.43 ID:8FAxkUk40
お終いです。読んでくれた人ありがとう

56 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:23:46.16 ID:VlXcG+jK0
うむ、素晴らしい乙
59 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:28:04.20 ID:6ccmleU70
鈴派の俺が浮気してしまいそうだ
面白かった
また書いてくれ
62 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:31:56.61 ID:HG1K6wa90
あっさり読めて好き
お疲れ
 
64 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:33:36.25 ID:qZrk/AyMO
シャルSS全然見ないから嬉しい
マジ乙
 
69 : 以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします: 2012/05/03(木) 01:45:35.89 ID:3ev5KxBF0
乙おやすみ